固くて強いものが世の中を支配しているかに見えるがね、
本当はいちばん柔らかいものが、
いちばん固いものを打ち砕き、こなごなにするんだよ。
空気や水のするように、タオの働きは、
隙のない固いものに滲みこんでゆき、いつしかそれを砕いてしまう。
何んにもしないように見えるがじつに大きな役をしているのだ。
このように、目に見えない静かな働きは
何もしないようでいて深く役立っている。
これは、この世ではなかなか人に気づかれないんだが、
比べようもなく尊いものなのだよ。
加島祥造 『タオ 老子』より