天国の箸地獄の箸
天国にも地獄にも食べ物は同じ分量、たくさんあります。
天国でも地獄でも、みんな円いテーブルを囲んで食事をしますが、
その時両者とも一メートル以上もある長い箸で食べなければならないのです。
いざ食事となると天国と地獄では、箸の使い方に大きな違いがありました。
地獄では、箸が長すぎるために、思うように食べ物を口まで運ぶことができません。
躍起になって自分の口まで食べ物を運ぼうとするのですが、
躍起になればなるほどうまくいかず、食べ物はポロポロと下に落ちるばかりでした。
ですから地獄にいる人達はいつまでたってもおなか一杯にならず、いつも空腹で苦しんでいました。
天国では、いつもおなか一杯の満足感で幸せを感じながら過ごしていました。
天国では、その長い箸を自分のためには使わなかったのです。
その長い箸で食べ物をつまむと、
その箸を自分の正面に座っている相手に向かって差しだし、
「あなたからどうぞ」と言って相手の口元まで自分の箸を運ぶのでした。
テーブルを囲むお互いがみんな同じように、「あなたからどうぞ」という箸の使い方をしています。
天国の長い箸は、自分のために使う箸ではなかったのです。
相手のために自分を働かせることによって、
相手もまた自分のために働いてくれる、天国ではそういうことが自然に行われているのでした。
ですから天国にいる人達はいつもおなか一杯で幸せいっぱいなのでした。
自分の「満腹」(欲求)を満たすことだけを目的にし、
そこから抜け出さずにいくら躍起になっても結局は「空腹」(空しさ)に苦しむだけです。
自分だけのことから出発したのでは、本当の「満腹感」(満足感・幸せ)を感じることはできないということなのでしょう。
人間はいつも長い箸を持って生きているのかもしれません。
「あなたからどうぞ」と言って相手のために使える「長い箸」を持っていたいものです。
Paramahamsa Mahavatar Sri Swami Kulum by Sat Chit Om